「抜いて終わり」ではなく、将来の治療まで考える
抜歯後の骨は自然治癒の過程で変化します。リッジプリザベーションは、その変化を完全に止める治療ではありませんが、骨の減少を抑えるための選択肢のひとつです。
なぜ、抜歯した後の「骨」を考えるのか
歯を抜くと、その歯を支えていた骨には生理的な変化が起こり、時間とともに幅や高さが減少することがあります。抜歯後に残る歯槽堤は、インプラントだけでなく、入れ歯を支える土台としても重要です。また、現時点で治療方法が決まっていなくても、骨の量や形をできるだけ保つことは、将来の治療の選択肢を考えるうえで意味があります。
< ポイント >
リッジプリザベーションは抜歯後の骨吸収を「ゼロにする」処置ではなく、無処置で治癒させる場合と比べて、骨の形態変化を小さくすることを目指す処置です。
抜歯時から計画する
抜歯後の最終的な治療方法まで考え、抜歯窩の状態を確認しながら必要性を判断します。
骨の輪郭を保つことを目指す
骨補填材などを用いて、抜歯後に起こる歯槽堤の幅・形態の変化をできるだけ抑えます。
次の治療につなげる
インプラント・入れ歯など、その後の治療に向けて、できるだけ良い骨条件を残すことを目指します。
こんな方のための治療です
リッジプリザベーションは「インプラントをする人だけの処置」ではありません。抜歯したあとの骨をできるだけ残し、その後の治療につなげたい方に検討される処置です。
インプラントを考えている方
インプラントを支える骨の量や形をできるだけ残し、将来の治療につなげたい方。
入れ歯を予定している方
入れ歯を支える土台となる歯槽堤の形をできるだけ保ち、義歯治療につなげたい方。
まだ治療方法を決めていない方
すぐにインプラントや入れ歯を決めなくても、将来の選択肢をできるだけ残しておきたい方。
大切なのは、抜歯する時点からその先を考えること
歯を抜いたあとに骨が痩せてから対応するのではなく、抜歯のタイミングで「この骨を将来どう使うか」を考えることが大切です。
通常の抜歯後治癒と、リッジプリザベーション
抜歯後、そのまま治癒を待つ
抜歯窩は血餅から治癒していきますが、その過程で周囲の歯槽骨の幅や高さが変化します。
リッジプリザベーションを行う
抜歯窩に骨補填材などを填入し、必要に応じて被覆材で保護します。骨の変化を抑え、インプラントや入れ歯など、将来の治療につながる骨の形態をできるだけ維持することを目指します。
実際の処置の流れ
以下は、2本の抜歯窩に対してリッジプリザベーションを行った際の術中記録です。症例や骨の状態により処置方法・使用材料は異なります。
この先は実際の術中写真を掲載しています。
出血を伴う口腔内写真が含まれます。
01抜歯窩の状態を確認
抜歯後、歯を支えていた骨の壁や抜歯窩の形態を確認します。
02抜歯窩を清掃
抜歯窩内を確認し、治癒を妨げる組織などが残らないように清掃します。
03骨補填材を準備
症例に応じて選択した骨補填材を準備し、抜歯窩に填入できる状態に整えます。
04抜歯窩に骨補填材を填入
抜歯窩の形態に合わせて骨補填材を填入し、必要な位置に整えていきます。
05被覆材で保護し、縫合
骨補填材の上をコラーゲン系の被覆材などで保護し、周囲組織を縫合して治癒を待ちます。
すべての抜歯に必要なわけではありません
リッジプリザベーションは、抜歯後の治療計画や骨の状態に応じて検討します。たとえば次のような場合に選択肢となることがあります。
- 抜歯後にインプラント治療を考えている
- 抜歯後に入れ歯を予定している
- まだ治療方法を決めていないが、将来の選択肢を残したい
- 抜歯後に骨が痩せるのをできるだけ抑えたい
- 前歯部など、歯ぐき・骨の輪郭が重要な部位
当院の考え方
抜歯する歯の状態、周囲の骨・歯ぐき、感染の有無、最終的な治療方法などを確認し、必要性を個別に判断します。リッジプリザベーションを行っても、将来の骨造成が必ず不要になるわけではありません。
治療前に知っておいていただきたいこと
外科処置のため、術後に痛み・腫れ・出血などが生じることがあります。また、感染、創部の開き、骨補填材や被覆材の露出・脱落などが起こる可能性があります。治癒の程度には個人差があり、骨の状態によっては追加の骨造成が必要になることがあります。
リッジプリザベーションは、抜歯後の骨吸収を完全に防止する治療ではありません。診査・診断のうえで、メリットと限界を説明してから治療方針を決定します。
よくある質問
リッジプリザベーションをすれば、骨はまったく減らないのですか?
いいえ。抜歯後の骨の変化を完全に止めることはできません。目的は、無処置で治癒させる場合に比べて、骨の幅や形態の変化をできるだけ小さくすることです。
抜歯する人は全員したほうがよいですか?
すべての抜歯で必要な処置ではありません。将来の治療方法、抜歯部位、骨や歯ぐきの状態などを確認して適応を判断します。
どのような材料を使いますか?
骨補填材やコラーゲン系の被覆材などを用いることがあります。材料の選択は抜歯窩の状態や治療計画によって異なります。
入れ歯を予定している場合にも行うことがありますか?
はい。抜歯後の歯槽堤は入れ歯を支える土台にもなるため、骨の形態をできるだけ保つ目的で検討することがあります。必要性は、抜歯部位や骨の状態、今後の補綴計画によって判断します。
処置後、次の治療はいつ行いますか?
リッジプリザベーション後は治癒期間を置き、骨や歯ぐきの状態を確認したうえで、インプラントや入れ歯など次の治療時期を判断します。具体的な時期は症例によって異なります。
抜歯後の選択肢を残すために、抜歯前からご相談ください。
「抜歯が必要と言われた」「インプラントや入れ歯を考えている」「まだ治療方法は決めていないけれど、将来の選択肢を残しておきたい」「できるだけ骨を残しておきたい」という方は、抜歯前の段階でご相談ください。
参考資料
- 1. European Federation of Periodontology. “Which is best technique for preserving the alveolar ridge after tooth extraction?” (2023).
- 2. Avila-Ortiz G, et al. Effect of alveolar ridge preservation after tooth extraction: a systematic review and meta-analysis. J Dent Res. 2014.
- 3. Tonetti MS, et al. Management of the extraction socket and timing of implant placement: Consensus report and clinical recommendations. J Clin Periodontol. 2019.
※本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療内容は口腔内の状態によって異なります。